先輩が鬱で休職した話。
2016/03/20
僕の派遣された会社はありえない程安い金額でSIを受注していましたので、常に作業量に対して人が不足していました。
その為、スケジュール通りに進めようとしたら、残業、休日出勤は必至でした。
僕がこの現場に派遣されてから、丁度1年半位経っていましたが、1か月の労働時間は平均で250時間位だったと思います。
(しかも僕の会社には残業代の上限があり、50時間分位はサービス残業でした・・・。)
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外注の早期契約打ち切り
さて、そんな過酷な労働環境の中、1人だけ毎日定時帰りを決め込んでいた外注(45歳 女 独身)がいました。
彼女は残業しないと間に合わないスケジュールでも、
「それはスケジュールに問題がある。」
というスタンスで残業を一切しませんでした。
彼女は派遣先の意向でも絶対残業はしないですし、飲み会なんかにも絶対来ませんでしたので派遣先からの評判は悪かったです。
しかし、一緒に開発作業をした僕が見る限りでは、成果物の品質は高く、定時内での作業スピードも一般的なPGよりも早かったので、僕の中では
「こういうスタイルで働くのもアリなのかな?」
なんて思い始めていました。
そんなある日事件が起こります。
リーダー「平山さん(残業しない外注のこと)のことなんだけどさー。」
先輩「はい。(ギクッ)」
リーダー「後3ヶ月の契約予定だったけど、今月で終わりにしてくれない?」
先輩「え?!それはどういう・・・?」
リーダー「だって、アレ全然言う事聞いてくれないじゃん。あーゆータイプ正直要らないんだよねー。」
リーダー「スケジュールだって守ろうとする気がないでしょ?そういうのウチ要らないから。」
先輩「はぁ。そしたら代わりの要員がいるかマネージャーに確認しま・・・」
リーダー「いや、交代要員は別のベンダーに頼むから探さなくていいよ。」
先輩「そうですか・・・。」
この派遣先の文化が「残業する奴=偉い」、「残業しない奴=使えない」というものだったのです。
実際、成果物の品質や作業スピードには全く問題なかったのですが、派遣先のニーズ(残業しろ!)に応えられなかったので契約の予定を繰り上げて解雇になってしまいました。
そもそも論で言えば、派遣ではなく業務委託の契約なのでそんなこと言われる筋合いはないのですが、そんな話が通用する相手ではありません。
先輩「平山さん、要らないって言われちゃいました・・・。」
現場マネージャー「マジで?!」
先輩「交代要員を提案しようとしたのですが、うちからは要らないとも言われました・・・。」
現場マネージャー「そっか・・・。あいつ等ヤクザだな。まぁ、お前は気にするな。」
先輩「どうしましょう?」
現場マネージャー「要らないってハッキリ言われちゃった以上どうしようもないな。」
現場マネージャー「会社には俺から言っておくから、平山さんにはお前から説明しておいてよ。」
先輩「はい。分かりました。」
そして、先輩は重い足取りで外注の元へ向かい、状況の説明をしました。
先輩「・・・という訳なんです。本当に申し訳ありません。」
先輩「残り3ヶ月の仕事はうちの会社で責任を持って探しますので。」
外注「いえいえ、あなたが謝る必要は全くないですよ。何となく予想もついてましたし。」
外注「そして次の仕事も探して貰わなくて結構ですよ。」
外注「私は別におたくの会社を経由して仕事がしたい訳ではありませんので。」
先輩「すいません。でも、そういう訳には・・・。」
外注「本当に大丈夫ですから。むしろ早くこの現場を抜けられて嬉しい位に思っています。」
と、先輩は契約打ち切りの話を本当に申し訳なさそうにしていましたが、当の外注は
「あー。やっぱりね。」
といった感じで、全然驚きもせず、むしろ早く抜けれることを喜んでいました。
まぁ、この現場の雰囲気と彼女のポリシーは絶対に合いませんから、早く抜けることはお互いの為になったと思いますけど。
先輩が鬱で休職する
そして1ヶ月位経過し、開発も終盤に差し掛かったある月曜日の朝、先輩から一本のメールが届きました。
「今日は病院に行くので午後出社になります。宜しくお願いします。」
先輩はここ数ヶ月、月曜日は遅刻したり欠勤したりすることが多かったので、僕は
「またいつものパターンか・・・。」
「だらしねーなw」
と若干呆れていました。
そして午後になると次のようなメールが来ました。
「タカ、本当に申し訳ない。俺は鬱病で会社に行けない。部長と相談して1ヶ月休職させてもらうことになった。本当に申し訳ない。」
僕は、とにかく驚きました。
「鬱病?えっ何それ?!そんなパターンあるの?!」
バカな僕は、そもそも鬱病というものが何なのか良く分かっていませんでした。
そして、新人この現場に派遣されて、この先輩の元でずっと仕事をしていた僕にとって、先輩がいなくなるということは、この戦場に1人取り残されるということではないかと・・・。
その日のうちに営業部長が飛んできて顧客へ説明にあたりました。
そして、
「1ヶ月だけだから頑張ってくれ。」
と僕に言って帰って行きました。
僕はその時、不安で不安で仕方ありませんでした。
仕事は全て先輩に教えてもらいましたし、こんな地獄な現場も先輩がいたからこそやっていけたと思っていました。
しかも外注も抜けた(切られた)後なので、この現場には本当に僕1人になります。
僕は営業部長に言いたかったです。
「僕もこんな現場嫌です。抜けさせて下さい。」
「残業代も出ないのに残業や休出させられて、ボーナスや昇給だって楽な現場で働いている同期と全く変わらないじゃないか。」
と。
でも、言えませんでした。
責任感なのか、勇気が無かったのか、ドMなのかは分かりませんが・・・。
結果的に僕は1人取り残されてしまいました。
そして、入社2年目にしてトコロテン方式で開発リーダーに昇格したのですw
今思うこと
外注が突然切られた件は、契約上1ヶ月前に通達する必要があるのでNGです。
IT業界のルールを完全に無視しています。
しかし、ヤクザな派遣先だったのでそんなことはどうでも良かったのでしょう。文句があるならお前らも切るぞってねw
しかし現場マネージャーはデスマーチが当たり前の現場で、残業、休日出勤が普通にありますよって事を何故伝えてなかったのでしょう?
それさえ言っていればこんな面倒なことにならなくて済んだと思うのですが・・・。
彼女的にはすぐ抜けれたから良かったのでしょう。
ただ、リーダーとして余計な気を使うことになってしまった先輩は可哀相ですね。
結局先輩は最初1ヶ月休職と言っていたものの、なかなか症状が回復せずに結局半年位休職していました。
もちろん、この現場に戻ってくることは2度とありませんでした。
僕はそもそも鬱病なんてものを全然知らなかったですし、今思うとそれが本当に申し訳なかったと思います。
多分先輩の目に僕は、バカな新人がバカなりに一所懸命仕事を覚えようとしているように映ったんじゃないかと思います。
そんな新人の前で弱気な発言やネガティブな事を言う訳にはいかなかったのだと思います。
そして、結局潰れるまでアラート上げることは無く、突然休職となってしまいました。
今思えば、
- 月曜日会社来ない。
- 子供生まれた。
- ずっと稼働高い。
- 責任感が強い。
- 頭が良い。
- 板挟みのポジション。
など、幾らでも鬱病の要素がありました。
でも僕はそんな事全く気が付きませんでした。
IT業界は結構鬱病になる人が多いです。
そして、鬱病になるのは責任感が強い人が多いので自分からアラートを上げることは殆どありません。
最後の最後まで頑張って、ある日突然会社に来なくなってしまうのです。
そうなる前に、周りが気付いてフォローする必要があると今は強く思います。
で、その後のプロジェクトがどうなったかと言いますと・・・。
単価50万位のクソPGが別のベンダーから2人増員になって、開発は形だけ終了となりました。
僕達の作ったプログラムはエビデンスの取得やテストケースの作成を工数の関係で削ったものの、さほど品質の低下は無かったと思います。
しかし、新しく入った2人の作った画面は本当に形だけのもので、機能を満たせてないというレベルの代物でした。
それでも、一応開発工程完了として上層部に報告出来るのでリーダーは良しとしていました。
あとは結合テストで少しづつ直せばいいだろと。
(結合テストで直しまくる羽目になったのは僕なんですけどね・・・w)
そして、結局この発注管理システムも運用に耐えらえるレベルにはなりませんでした。
そりゃそうですよね。
いきなり入ったクソPGが滅茶苦茶な設計書を見てその通りに作ったんですからw
営業は、
「仕様通りに作った。運用に耐えられるレベルに機能を修正するにはウン千万掛かる。」
と言い張り、結局このシステムもリリースすることは出来ませんでした。
これは、SIは安いもの程高く付くっていう一つの例ですね。